南の島から考えた

家族でニッポンの南の小さな島に移住してきました。長年夢見た憧れの島暮らし、その選択が成功だったのか失敗だったのかは…ちょっとまだ分かりません!

月桃見ながら

庭に月桃が咲いていた。

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かわいい名前の花だ、と思う。
名前だけでなく咲いている様子も可愛らしい。
先端を桃色に染めた半月状の蕾がたくさん連なっていて。
名前の由来もこの見た目からかな。

近頃島のあちこちで咲き始めたこの花のことは
少し前から何となく気にとまっていた。
名前を知ったついでに調べてみると、
高い抗菌・防虫・抗酸化作用のある植物であり
美容界では以前から注目されている、とのこと。

これなら庭にいっぱいあるし、そんなにいいものなら
自分で手作り石鹸とか化粧水とか作ってみようかなぁと
早速サイトをウロウロし始める私。

キットとかも売ってるし、けっこう簡単に作れるもんなんだなぁ。
原料もほとんど、オイルと精製水とグリセリン、とかシンプルだし。
ふーん、手作り化粧品の使用期限は大体2〜3ヶ月、かぁ。
冷蔵庫に保管したほうがいいのね、
やっぱ悪くなるもんね、オイルとか。

ン……??
悪く…なるよねぇ、普通…。
私、今まで使ってきた化粧品のこと、
悪くなるだとか使用期限とか
考えたことなんてなかったけれども
あれって大丈夫だったんか…?

まぁ、市場で売られてる化粧品は悪くならないように
保存料いっぱい入ってたんだろうな。

…………。
そんなのを私、今朝も顔に塗りたくったわけか…。

当たり前の事実かも知れないけど、
今更ながらにちょっとショックである。

ガッチガチに気を付けているわけではないけれど、
割と食品の鮮度や添加物なんかは気にかけるほうだったので、
同じように体に使うものである化粧品のそういう部分に
全く盲目だった自分に、ちょっとショックである。

島では食品が腐るのがとても早い。
気温も高いし湿度も高いし、太陽や動物や虫や植物も元気なら
発酵を促す菌たちも大変元気だからだと思う。
腐らず常識外に長持ちするほうがおかしいし、
気持ちがわるいことだ。

今日はそんな当たり前のことにまた一つ気が付けた。
それもこれも島暮らしと月桃のおかげだなぁ。

とりあえず、このあと私が手作り化粧品材料を
購入するだろうことは間違いない。


島の雨

そろそろ島は梅雨に突入したようだ。
雨や霧の日が多く、息をするのも面倒なくらいに
湿度が高い時もある。

などと書いているうちに、また今日も激しい雨が降り出した。

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夫は内地から持って来た大事なレコードコレクションに
黴が生えるのではないかと怯えている。

神奈川県から移住してきた夫婦と知り合いになったのだけれど、
バイク乗りである旦那さんが大事にしてきた革ジャンとブーツは
移住後1ヶ月もしないうちに黴だらけになったそうだ。

このあたりはもう、ある程度の被害は覚悟を決めるしかないだろう。

それにしてもこの土地は天気予報が当たらない。
ここは住所としては鹿児島県になるのだが
地理的にはほとんど沖縄県に近く、
従って地域の天気予報としては那覇に発表されるものを
参考にすれば良いはずだ。

が、しかし。
当たらない。

完全なる雨予報が出ていたとしてもピーカンに晴れることがある。
よく晴れるでしょう、とアナウンサーが言ったとしても
信用してはいけない。
一日のうちに、晴→雨→曇→また晴→かと思うとやはり雨、
なんてことも何度もあった。

夫は今、島の農家で働いているので
島人の方々と小さく交流できることがある。
農業経験の長い島人のオジサン方は
こういう不安定な天気でも神がかった洞察力と
長年の経験と勘で読み解いているのかもと思い、
会話に耳をそばだててみることがあるそうだ。

「今日、雨かねぇ」
「……」
「朝ちょっと降ったよねぇ」
「…夜中も降ってた」
「夜中?!何時頃ね?」
「…便所に起きたときだから、2時くらい」
「そうね、そんな時間に降ったかねー。今日は、畑どうかねぇ」
「……」

まぁ結局のところはここで生まれ育った男衆にも
さっぱり分からないようである。

というか、会話から察するに
予想しようという気すらさらさら無いらしい。
やってみてダメならダメでしょー、次いってみよー、
みたいなケ・セラ・セラ精神なのかもしれない。

ある種の諦めというか、何というか。
それはきっと、台風という自然災害と共に
生きざるを得ない土地柄からなのかもしれないけれど。

畑をやってみる

これは我が家の畑です。

2ケ月前、移住してきた当初は雑草だらけでソテツや庭木が伸び放題に伸びて、

ちょっと見て見ぬ振りしていたい位にひどい状態だった。

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いや、最初はあまりにも荒れ放題なので我が事と思いたくなくて、

「隣の土地はうちの敷地じゃないよね」なんて夫と話していたのだけど。

 

島は輸送費がかかるので物価が高い。

ガソリンも日用品も食品も全て、内地の2割り増しくらいの値段だ。

予想はしていたけれどやっぱりこの物価高は家計をじわじわと圧迫してきまして。


自分たちで自給できるものはなるべくやってみるしかないよ!

というわけで、見ない振りをしてきた畑の開墾に踏み切ったのです。


人力だけで遂行しようとした夫、3日で挫折。

南の植物たちの生命力と根っこの頑丈さは半端なものじゃありません。


丸一日ユンボ投入。

わざわざ業者に頼んだりしなくてもビール1ケースで

こういうことをやってくれる人たちが

すぐに見つかるのは田舎の有り難さかもしれません。

農業従事者や農業経験者がとても多いので、

大型機械を扱える人もたくさんいるわけです。

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ガガガガ グワシャーン!

で、、見る見るうちに伐採された木や植物の山ができました。

この山…どうしたらいいんだろう、と唖然と眺める我々。


「ほっといたらそのうち枯れるよー」とユンボしてくれた島人が言うので、

「どれくらいで枯れますかねぇ?」と聞いてみると、

「うーん、2年もしたら全部枯れて腐って無くなるんじゃないですかねぇ〜」

だって。


一応、どうにか廃棄できないものかと思って役場にも聞いてみた。

「あー、庭木はね、捨てるなら2ケ月くらい乾燥させて

生木じゃない状態になったら捨てられるけど、

でもここだと大体みんな空いてる畑とかに放っておくよね」

だそうで。


あ…、え…?

それでいいんだ…?

と思わされることも今はまだ多いけれど、

きっとだんだんこういう島の常識にも慣れていくんだろうと思う。


南の島からはじめまして

2016年の春、とある南国の離島に移住してきました。

家族構成は、夫と1歳10ケ月の子供が1人の3人家族。


私たち夫婦が選んだのは大概の人に「は?どこそれ?ていうか何て読むの?」

などと言われるマイナーな島で、全国的に見たら立派な過疎地域だと思います。

観光産業が盛んな南の島ではなく敢えてそういう地味な離島を選んだのは、

この島のスタンスに面白味を感じたからです。


よく名前を聞くような有名な島々からは

「貴方がたに移住してきてもらわなくても

私共は全く困りませんし関係もありませんが、

お出来になるのでしたらどうぞご自由に」

みたいな高飛車感を感じてしまって、始めから移住の選択肢に無く。


かといって島おこしや地域おこしに躍起になっているところは

「ぜひ来てよ!応援するよ!みんなでがんばろう!」

という松岡修造的熱さがあって、外見も中身も非運動部系の我々は

そのテンションについて行けないだろうなと。


でもこの島は外の力を頼りにしてないというか

はなからアテにしていないところがあって、

「フーン。来たいなら来たらいいよ〜、

なんの助けもできないけども、まぁ、邪魔もしないんで」

みたいな、良くも悪くもやる気の無い雰囲気なので、

ガツガツ頑張って生きて行きたくない私たち夫婦には

居心地が良いかもなと感じました。


都会でそれなりに一生懸命働いて暮らしてきたけれど、

自分の生活や社会システムに矛盾や無理を覚えて田舎暮らしを夢見る…。

そんな人たちってこの現代増えてきていると思います。


私、現在30代後半なんですが、私たちの親世代ってとにかく田舎を嫌って

誰も彼もが都会、もしくは都会っぽさを目指した世代だと思うんです。


ただ、取り残されたように存在する田舎らしい田舎な場所も

この日本にはまだたくさんあるわけで、

私たちの親世代が捨ててきた見向きもされないそういったものを

孫世代である私たちがまた求め始めているわけですよね。

これは、親世代が必死になって構築してきた

とにもかくにも利便性!なライフスタイルが、

結局のところ人間の本能としては快適では無かったからじゃないかなぁ。

 

夢の田舎暮らしを実践したものの、その夢破れて

都落ちならぬ都登りして都会に帰っていく人もとても多いと聞きます。

でも私、自然の多いところで暮らしたいという気持ちは

人間としてはとても全うなことだと思うんです。

一言で「田舎」や「島」などと言っても

土地によっていろいろと性質もありますし、

人間同士と同じで相性ってありますから、

失敗に終わってしまった例は

ただその相性が合わなかったというだけじゃないかと。


私たち家族の移住はまだ成功するか失敗に終わるかは分からないですが、

気付いたことや考えたことなど書いていってみたいと思います。