島の雨
そろそろ島は梅雨に突入したようだ。
雨や霧の日が多く、息をするのも面倒なくらいに
湿度が高い時もある。
などと書いているうちに、また今日も激しい雨が降り出した。
夫は内地から持って来た大事なレコードコレクションに
黴が生えるのではないかと怯えている。
神奈川県から移住してきた夫婦と知り合いになったのだけれど、
バイク乗りである旦那さんが大事にしてきた革ジャンとブーツは
移住後1ヶ月もしないうちに黴だらけになったそうだ。
このあたりはもう、ある程度の被害は覚悟を決めるしかないだろう。
それにしてもこの土地は天気予報が当たらない。
ここは住所としては鹿児島県になるのだが
地理的にはほとんど沖縄県に近く、
従って地域の天気予報としては那覇に発表されるものを
参考にすれば良いはずだ。
が、しかし。
当たらない。
完全なる雨予報が出ていたとしてもピーカンに晴れることがある。
よく晴れるでしょう、とアナウンサーが言ったとしても
信用してはいけない。
一日のうちに、晴→雨→曇→また晴→かと思うとやはり雨、
なんてことも何度もあった。
夫は今、島の農家で働いているので
島人の方々と小さく交流できることがある。
農業経験の長い島人のオジサン方は
こういう不安定な天気でも神がかった洞察力と
長年の経験と勘で読み解いているのかもと思い、
会話に耳をそばだててみることがあるそうだ。
「今日、雨かねぇ」
「……」
「朝ちょっと降ったよねぇ」
「…夜中も降ってた」
「夜中?!何時頃ね?」
「…便所に起きたときだから、2時くらい」
「そうね、そんな時間に降ったかねー。今日は、畑どうかねぇ」
「……」
まぁ結局のところはここで生まれ育った男衆にも
さっぱり分からないようである。
というか、会話から察するに
予想しようという気すらさらさら無いらしい。
やってみてダメならダメでしょー、次いってみよー、
みたいなケ・セラ・セラ精神なのかもしれない。
ある種の諦めというか、何というか。
それはきっと、台風という自然災害と共に
生きざるを得ない土地柄からなのかもしれないけれど。